\( S_3 \) の乗法表をかけ。

 「…は?」

 今まで聞いたことない「乗法表」という単語を初めて受講した授業でいきなりレポート課題として出されたため、非常に戸惑った。

 戸惑った原因はそれだけでない。なぜなら、授業でも全く触れず、しかもハンドアウトにも全く手法が載っていない。ググってみてもよく分からないし、全く解ける気配がなかったが、図書館で1コマ分、真剣に調べて考えてみたら解けたので、ぼくと同じところで他の人に引っかかってほしくない+初回から応用代数を嫌いになってほしくないため共有します。

問題7
 \( S_3 \) の乗法表をかけ。
 ちなみに、  S_3  = \{ \mathrm{e}, ( 1, 2), ( 1, 3), ( 2, 3), \sigma, \tau \}  \sigma = \left( \begin{array}{cc} 1 & 2 & 3 \\ 2 & 3 & 1 \end{array} \right)  \tau = \left( \begin{array}{cc} 1 & 2 & 3 \\ 3 & 1 & 2 \end {array}  \right)


 この問題を解くために乗法表とは何か、ということを知る前に \( ( 1, 2) \) や \( ( 2, 3) \)が何なのかを知る必要があった。調べてみると以下のこと出てきた。

\( M = \{ x_1, x_2, ..., x_n \} \) のとき、置換  {\sigma \in S_n} {\sigma = \left( \begin{matrix} x_1 & x_2 &\cdots &x_n \\ \sigma(x_1) &\sigma(x_2) &\cdots &\sigma(x_n) \end{matrix} \right)}と表す。通常、 {M = \{ x_1, x_2, \cdots, x_n \} = \{ 1, 2, \cdots, n\}}で表し、 \sigma(x_n)で動かない元は省略する。

 さらに読み進めてみると、以下のようなことがわかった。

  n\geq2のとき、置換 \sigma \in S_nに対し、 i_1, \cdots, i_r \in Mが異なる元で  \sigma(i_1) = i_2, \cdots, \sigma(i_r-1) = i_r, \sigma(i_r) = i_1, \sigma(k) = k (k \neq i-1, \cdots, i_r)
となるとき、 \sigmaを長さ rの巡回置換といい、 (i_1, i_2, \cdots, i_r)で表す。
※この場合、 k \sigmaにおいて動かないため、省略

 今回の問題を例に挙げて解説すると、
  ( 1, 2)というのは、最初の数列 \{ 1, 2, 3\}のうち、1と2を入れ替えたもので、行列で表すと

   ( 1, 2) = \left( \begin{matrix} 1 & 2 & 3 \\ \downarrow & \downarrow & \downarrow \\ 2 & 1 & 3 \end{matrix} \right)

となる。この場合、3は変化していないため、 (1,2)のみとなる。

 同じ手法で考えると、問題7の S_3はこのように書き換えることができる。

   S_3 = \left\{ \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 1 & 2 & 3\end{pmatrix}, \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 2 & 1 & 3\end{pmatrix}, \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 3 & 2 & 1\end{pmatrix}, \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 1 & 3 & 2\end{pmatrix}, \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 2 & 3 & 1\end{pmatrix}, \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 3 & 1 & 2\end{pmatrix} \right\}

 そして積に関して考えると、乗法表は以下のようになります。(九九表みたいですね)

e (1,2) (1,3) (2,3) σ τ
e ee e(1,2) e(1,3) e(2,3)
(1,2) (1,2)e (1,2)(1,2) (1,2)(1,3) (1,2)(2,3) (1,2)σ (1,2)τ
(1,3) (1,3)e (1,3)(1,2) (1,3)(1,3) (1,3)(2,3) (1,3)σ (1,3)τ
(2,3) (2,3)e (2,3)(1,2) (2,3)(1,3) (2,3)(2,3) (2,3)σ (2,3)τ
σ σe σ(1,2) σ(1,3) σ(2,3) σσ στ
τ τe τ(1,2) τ(1,3) τ(2,3) τσ ττ

 本題の計算方法ですが、非常に単純で、
 例えば、 (1,2)(1,2)の場合、右から左へ行列をたどっていけばいいだけ。

   (1,2)(1,2) = \begin{pmatrix} 1 & 2&3 \\ 2&1&3 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 & 2&3 \\ 2&1&3 \end{pmatrix}

 はじめに、右の行列の1行目の1に着目します。そして、その下の行をみると2になっている。

   (1,2)(1,2) = \begin{pmatrix} 1 & 2&3 \\ &&\\ 2&1&3 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 & 2&3 \\ \downarrow & & \\ 2&1&3 \end{pmatrix}

 そして、左の行列では2に注目し、そのまま下の行をみると、1になってる。

   (1,2)(1,2) = \begin{pmatrix} 1 & 2&3 \\ & \downarrow & \\2&1&3 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 & 2&3 \\ \downarrow & & \\ 2&1&3 \end{pmatrix}

 なので、求める解の行列の1行目にある1の下は1になる。

   (1,2)(1,2) = \begin{pmatrix} 1 & 2&3 \\ & \downarrow & \\2&1&3 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 & 2&3 \\ \downarrow & & \\ 2&1&3 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 & 2& 3 \\ \downarrow &&\\1 & & \end{pmatrix}

 同じ手法を続けると、(1,2)(1,2)

   (1,2)(1,2) = \begin{pmatrix} 1 & 2&3 \\2&1&3 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 & 2&3 \\ 2&1&3 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 & 2& 3 \\ 1 & 2 & 3 \end{pmatrix} = \mathrm{e}

 となる。

 こういった単純作業を続けていくと解答が出るのであとは頑張ってください。
 ちゃんと計算が合えば、以下のようになると思います。

e (1,2) (1,3) (2,3) σ τ
e e (1,2) (1,3) (2,3) σ τ
(1,2) (1,2) e τ σ (2,3) (1,3)
(1,3) (1,3) σ e τ (1,2) (2,3)
(2,3) (2,3) τ σ e (1,3) (1,2)
σ σ (1,3) (2,3) (1,2) τ e
τ τ e (1,2) (1,3) e σ